「残る席はあと2つ。
 ……館林女子、82点。高知学芸、76点。
 朝日奈チーム、70点」

司会者が再度整理をする。
「では問題。
 世界の国旗で、一番多くの星が描かれているのはアメリカの五十。
 では二番目に多く描かれているブラジルの国旗に星はいくつ?

全チームが答えを考え始めた。

「いいですか? では、ホールドアップ!」
3チームが一斉にボードを上げた。
「館林女子、白紙。高知学芸、23。きらめき高校、23……正解は……」

「ゴクリ……」
一瞬の静寂に、挑戦者が生唾を飲み込む音が響く。

「23です。高知学芸、きらめき高校に23ポイント!」


「これで……」
先に決勝進出を決め、見守っていた公が計算した。
「高知学芸が99点。朝日奈さんの所が93点。館林女子が82点」
「次で決まると思うわ」
詩織が言った。
「ひなちゃん……根性よ……」
沙希も目を閉じて祈っていた。

「問題、電報を打つ際に、最低料金で打てるのは何文字まで?


「ヨッシー、わかる?」
「いや……電報なんて打ったことねぇからな」
夕子の問いかけに好雄が申し訳なさそうに頭を掻いた。
仕方なく、夕子は未緒に尋ねる。
「え? 私も……ちょっと……20文字くらいだったように思うんですが……」
「えぇ、そんなに打てるの?」
夕子がまずいという顔をした。
「まずいのか?」
好雄が尋ねる。
「考えてみればわかるっしょ。うちが白紙だとして、館林女子はあと18点なんだから……」
「あ、一発逆転で勝ち抜けもあるんですね」
未緒が納得したように手を打った。
「そうよ、白紙で出しても……館林女子が正解したら……まずいっしょ?」
「勝負賭けるか?」
好雄が言った。
「うん……」
夕子が頷いた。
「勝負だかんね……ここは……」
夕子は不安そうに見つめる未緒と好雄に確認すると答えを書いた。

「ひなちゃん……大丈夫かな?」
「詩織は知ってるの」
心配そうにする詩織に公が尋ねた。
「うん……」
詩織は頷くと、沙希と公の耳に答を小声で教えた。


「ホールドアップ!」
司会者の合図と同時に全員が札を上げた。
「館林女子、白紙。高知学芸、25。きらめき、20……正解は……」
司会者が言葉を切る。
夕子は一瞬目を伏せた。
(あちゃ……館林女子は知らなかったん……勝負は早かったのかな……)
見つめる詩織も目を伏せた。
(ひなちゃん……)

「正解は25文字です。高知学芸高校、勝ち抜け〜」
決勝進出を決めたのは高知学芸高校だった。

「さぁ、残る席はあと一つです。現在、館林女子が82点。
 きらめき高校が73点。次で決まるでしょうか? 問題です」

運命の問題が出題された。

「問題。
 ユースホステル協会のパスは、家族・少年・青年・成人・リーダー・終身の6種類がありますが、その中で青年パスの対象は満何歳未満?

「あ、これ……」
沙希は思わず大声を出すところだった。
「ひなちゃんだったら知ってるはずよ。だって去年、私と一緒に行ったもん、ユースに」
「へぇ……じゃ、大丈夫だね」
沙希の言葉に安心した公の言葉に詩織が言った。
「でも……館林女子が間違えないと……」


「ホールドアップ!」
2チームが答を出した。
「館林女子、19歳。きらめき高校、19歳……正解は……」

(負けた……)
詩織が、そして夕子が、好雄が、未緒が目を伏せた。
19歳未満。
 両チームとも正解、そして……館林女子100点突破、勝ち抜け、決勝進出!!!

敗者が決定した。
決勝直前、最終関門クイズに敗れたのは、きらめき高校・朝日奈チームだった。

「……あ〜あ……終わっちゃった……」
夕子が微笑みを浮かべた。
「残念でした……もう少しでしたのに……」
未緒も悔しそうな顔をする。
「夕子、今度は泣かないのか?」
好雄が関東大会での夕子を思いだして言った。
「あはは……もう泣かないよ」
夕子は言った。
「だって、あたしたちって考えて見たら、関東大会で負けてるんだもん。
 いわば、全国大会はオマケみたいなもんだから」
「そうですよね……よくここまで来ましたよね……」
「悔い無し……ってとこか」
未緒の言葉に好雄が続けた。
「うん……悔いは無いよ……多分……」
「多分?」
夕子の言葉に好雄が聞き返した。
「うん……ここまで来れたんだから、悔いはないんよ。
 でもね……」
「でも……?」
夕子の声が涙声になってきた。
「シオリンと……シオリンとの約束を守れなかったことが……ちょっち、悔しいかな……」
夕子はそれだけ言うと目を伏せた。
「夕子……」
「夕子さん」
好雄と未緒が心配そうに声をかけた。
「ちょっとまって……今、シオリンに涙は見せたくないんだから……もう少し待ってよ……」
夕子は必死で涙を止めようとしていた。
「そうだな……詩織ちゃんに、お祝いの言葉をかけないといけないもんな」
「うん……」
好雄の言葉に夕子は頷いた。
「あたしが涙を見せたら……シオリンは気を使うもんね。
 ……へへ……あたしって、そういうところには気を使うタイプだから……」
「ふふふ……そうでしたね……」
未緒も笑顔で答えた。
「さ、涙は止まった……シオリンにお祝いの言葉をかけるよ」
夕子が顔を上げた。涙は止まったようだ。
「あぁ」
「はい」
好雄と未緒が大きく頷いた。

「ひなちゃん……」
詩織が、俯いて歩いてきた夕子に言葉をかけようとした。
「あぁ、残念残念。
 ……もうちょいだったんだけどねぇ……」
夕子は笑いながら詩織の肩を叩いた。
「あとは、シオリンに任せたかんね」
「ひなちゃん……」
沙希も呆気にとられている。
「さ、行くよ。ヨッシー、未緒」
夕子は好雄と未緒を促した。

「ひなちゃん……私たち……」
詩織は自分たちに背を向けて歩いていく夕子の後ろ姿に声をかけた。
「私たち……絶対に優勝するから……」
「シオリン」
夕子が振り返った。
「当たり前っしょ。
 優勝よ、絶対に優勝だかんね……」
「ひなちゃん……」
詩織は夕子の目元に涙の跡を見つけた。
「次に、シオリンと対決するときはあたしが勝つんだからね。それまでは……」
「次……って……?」
公が首を捻る。
「高校生クイズは終わっちゃったけど、次にどっかでシオリンと勝負するときはあたしが勝つんだから……
 その時まで……その時までシオリンには日本一でいてもらうからね……約束だよ!」
「……うん」
詩織は頷いた。
「さ、行くよ!」
夕子はそれだけ言うと再び背を向けて歩いていった。
「ひなちゃん……さよなら……」
詩織は夕子の後ろ姿に手を振った。


詩織と夕子の次の勝負……それは数年後に実現することになる……

「では、これより3チームは頂上に向かいます。
 途中で八合目付近の山小屋で一泊し、明日に頂上へ到達。
 頂上で御来光を拝んだあと、決勝を行います」

スタッフが説明をした。

決勝に進出した3チームは日本一を決める場所……日本一の富士山頂上へと黙々と歩いていった。
先頭を歩くのは、高知県代表・高知学芸高校。
続いて上っていくのが、群馬県代表・館林女子高校。
そして最後に、東京代表・きらめき高校。


いよいよ決戦は明日である。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第3部 全国大会編
サブタイトル19:「さよなら……」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子, ほか多数
感想投稿数0
感想投稿最終日時2019年04月11日 23時48分02秒

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