そう、そのときはそれが始まりだなんて、全然気づかなかったんです‥‥


「あれ?」
「え?」

突然背後からかかった声に思わず振り返ると、そこには最近ようやく見慣れてきたばかりの学生服‥‥丸井高校の学生服‥‥を着た一人の男の人が立ってました。
その男の人は、私が気づいたのを見てゆっくりとこっちに近づいてきて‥‥そこで私が友達と一緒にいる事にようやく気づきました。
途端に、その顔に「しまったっ!」といいたげな表情が浮かびます。

‥‥多分、鏡があれば判ると思うけど、私もそんな表情をしてると思います。

「え? 美樹、この人知ってる人なの?」
「え、えと・・・」

案の定、その友達、青葉林檎ちゃんは突然の闖入者に不思議がってます。
無理もありません。だって、林檎ちゃんが知っている限り、私に男の人の知り合いなんていない‥‥はずですから。

「‥‥あ、えっと‥‥確か、君、定期落とした娘だよね?」
「え?‥‥は、はい!」

不審げな表情を浮かべたままの林檎ちゃんに、いったいどう説明しよう‥‥そう迷っていた私に、男の人が話しかけてきました。
一瞬、何の事かわからなかったけど、それが男の人がだしてくれた助け船だってことに気付いて、慌てて返事をする私。
男の人は林檎ちゃんに「この前、近くの通りで‥‥」と『定期を拾った経緯』を簡潔に伝えました。それを聞いた林檎ちゃんは、「ははぁ」と納得顔で頷き、頼みもしないのにその男の人にお礼を言いだしました。

‥‥私は、そんな事より、早くこの場を立ち去りたいのに‥‥

「ほら、美樹!あんたもちゃんとお礼を言わないと。
 どうせ美樹のことだから、まともにお礼も言っていないんでしょ?」
「う‥うん‥‥」

私は、冷や汗をかきながら林檎ちゃんの言葉にあいづちを打つしかなかったんです‥‥

「もう!あれほど外では話しかけないでくださいって言ったじゃないですかっ!」
「ご、ごめん‥‥」

とっぷりと日の暮れた窓の外。
春にしてはちょっと肌寒い風が開け放たれた窓から部屋の中に入り込んできます。
その窓から、星空を眺めていた男の人‥‥お昼、丸井デパートで会った、あの男の人です‥‥に開口一番、おもいっきりまくし立てるように怒鳴りつけました。
男の人は、済まなそうな表情で謝りますが、そのぐらいで収まるほど私の怒りは小さなものじゃありません。

「わかってるんですかっ!?
 いくら今の状況が不可抗力、成り行きでこうなったんだって言っても、そんな事誰が信じてくれます?
 もし学校にでもバレたら、即刻退学ですよ!」
「う‥‥いや、それは判ってるんだけど、つい‥‥‥ね」
「一瞬の気の緩みが、最悪の事態を生むんです!」
「ご、ごめん! 悪かったってば!」

今にも噛みつきかからんばかりの勢いに、男の人の顔はこわばってしまってます。

‥‥‥ふぅ。

ため息一つ。
私はようやく肩を降ろしました。
それを見た男の人も、ほっとした表情。

「‥‥もういいです。
 今日は高瀬さんがとっさに機転を働かせたおかげで、何とか林檎ちゃんにも怪しまれずにすんだんですし‥‥
 でも、ホント、次からは気をつけて下さいね。お願いします」

この前から何度繰り返したかわからないセリフで念を押す私。

「ああ、大丈夫、気をつけるよ。うん」

これもやっぱり変わらないセリフ。ホントに判ってくれたのか‥‥
でも、これ以上話していても、何の進展もしないってことだけはこの数日の間で身を持って体験してました。
気持ちを切り替えようと、今からしなければならない事を頭の中で数え上げます。

「‥‥それじゃ、わたしは夕飯の支度をしますから、高瀬さんはいつものようにおふろの掃除お願いします」
「ああ、了解」
「‥‥‥絶対にわたしのものに触らないで下さいね」
「わ、分かってるって!」

バツが悪そうに、そそくさと部屋から出て行く男の人の背中に、私は大きなため息をひとつつきました。

はぁ‥‥どうしてこんなことになったんだろう‥‥‥‥

あこがれの高校生活。

この春から、丸井高校に入学する事になった私は、仕事の都合で1年の間長期出張に出ることになった両親から離れ、慣れない、でも初めての経験がたくさんつまっているだろう一人暮らしを始める事になりました。

『美樹‥‥本当に大丈夫? 私達と一緒に行かない?』
『友達もいるし、高校だって入学早々編入することになるから、そっちの方が大変でしょ?』
『でも、女の子の一人暮らしだなんて‥‥』
『もう‥‥お母さん、私だって高校生なんだから、少しの間ぐらい大丈夫!』

渋るお母さんを説得し、一人暮らしが始まったのが4月2日。
まるで一足飛びに大人になったような気分。

‥‥でも‥‥
うきうきと荷物を整理していたわたしの"新居"に、突然の痴漢‥‥いえ、訪問者が現れました。
しかも、信じられない事にこの部屋の権利書をもって。

『だいたいここは、僕が今日から住むことになってるんだ!』
『そんな勝手な事いって‥‥何が目的なんですか!
 へ、返答次第では、け、警察を呼びますからね‥‥!』

当然、言い争いになりました。
第一、わたし、男の人が苦手で今までまともに向かい合って話したことだってなかったのに‥‥いくら何でも見知らぬ男の人と一緒に住むなんて、考えたくも無い話でした。
でも、その男の人‥‥高瀬隆也さんが同じ高校の一年先輩で、彼の両親もまた、仕事の都合で離れたところ(アフリカ!?)にいるため、外に行くところが無いことを知り‥‥結局、『何らかの手を打つまで、彼がこの家に居候する』ということで互いに妥協することに決まったのでした。


こうして、わたし、石塚美樹は、学校にも友達にも、もちろん親にも内緒で、秘密の同居生活を始めることになったんです‥‥

to be continued ....

後書き

ども、け〜くんでっす(^O^)/
前回、SSを掲載したのっていつだったろうか‥‥懐かしいねぇ(.☆)\baki

久しぶりにずっといっしょSSを書いてみました。どうでしょうか?
この話は、停滞中(笑)の中編『ずっとないしょ』と同じ設定です。あちらが主人公、隆也から見た視点の秋の話であるのに対し、こちらは美樹から見た視点の春、出会ったばかりの頃の話になります。

ずっといっしょ、美樹で始めた際の不可解な点‥‥それはなんといっても「そんなケアレスミス、ホントに不動産屋がするのか?!」って事です(笑)
だって考えても見て下さい。契約する前から入居まで、下見とかいろいろな手続きを踏む必要があって、ばったり出くわすまで気づかないなんてあるんでしょうか?
しかも、気づいたあと、被害者である二人がその解決を不動産屋に頼まないあたりもなんか変ですよね(笑)
この話は、その辺をゲーム本編とは変えてあります。

さて、成り行きで見知らぬ男と同居するハメになった美樹。
これからいったいどうなるんでしょう‥‥?

次は、美樹の誕生日の話っす(^O^)/


作品情報

作者名 け〜くん
タイトル始まるなんて気付かずに‥‥
サブタイトル第1話 いきなりの同居生活?!
タグずっといっしょ, ずっといっしょ/始まるなんて気付かずに‥‥, 石塚美樹, 高瀬隆也, 青葉林檎, 織倉真奈美
感想投稿数10
感想投稿最終日時2019年04月10日 01時10分56秒

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