次の日の朝、純平は朝の眠りを堪能していた。

「ふにゃ……みゅ……」
ドシン
「フギャ!」
誰かが純平の上に飛び乗った。
「起っきろ! 純!」
沙希が純平の上に飛び乗ったのだった。
幼なじみの気安さ、
「おばさん、純起きてます?」
と言いながら純平の部屋に飛び込んだのだった。
(なんだよ、朝っぱらから……)
枕元の時計に目をやる。
「……うみゅ……まだ5時40分……」
そう言うと純平は再び眠りに落ちた。
「こら! 起きろ!」
むきになって起こそうとする。
「さぁ、虹野沙希、フライングボディプレスのあと、神島選手の腕をとった!
 おおっと、このまま腕固めに行きます」
沙希は実況しながら純平の腕を足で固めた。
「神島選手動けません。このままギブアップか?」
純平は沙希の足を外そうとした。
(な、なんだ……!!)
両足で純平の腕を挟み、絞めているため、純平の首筋まで沙希の太股が食い込んでいる。
しかも沙希はスカートだ。
ほっぺたに沙希の太股を感じた純平は飛び起きた。
「起きるよ!」
「さ、練習よ、がんばりましょう!」
ぶつぶつ言いながらも純平は着替えだした。

「おまえ、いくつになったんだよ」
純平は学校へ行く道で沙希に文句を言っていた。
「17よ。
 1月13日生まれだから、年が明けたら18……あ、忘れちゃったの?」
「違うよ、17にもなってスカートで男とプロレスごっこするか?」
「あ、技決められたのが悔しいんだ」
そう言っていると向こうから公が歩いてくる。
「おはよう沙希ちゃん」
「おはよう、公くん」
そう言って二人は純平を引きずるように校内へ入って行った。


「ハァハァ……」
純平がグラウンドに倒れこんでいる。
「どうだ? きついか?」
公が気遣っている。
「ハァハァ……なんの……ハァハァ……これしき……ハァハァ」
朝練は思ったよりもきつかった。
しかし、それよりも……
「それより、なんで俺とお前だけなんだ?」
純平は公に尋ねた。
「沙希ちゃんもいるよ」
「そうじゃなくて、他の部員は?」
朝練にきていたのは公と純平と沙希だけだった。
「朝練は自由参加なの」
沙希が答えた。
「そんなこと、聞いてないぞ!」
「言ってないもん」
純平の追求にあっさりと沙希が言う。
「こんにゃろ! 明日からこないぞ!」
怒る純平を沙希は無視して
「ほら、早く着替えないと授業はじまちゃうよ!」
そう言って公と一緒に部室へと走って行った。
「サッカーなんか……サッカーなんか……だぁっいっ嫌いだぁ!!」
そう叫びながら純平は目の前にあったサッカーボールを思いっきり蹴飛ばした。
ボールはグーーーンと飛んで行って反対側のゴールネットに突き刺さった。
「ふぇ〜……どうだ、見たか! 70メートルのロングシュートだぞ!」
そう言ったが、沙希はいなかった。
「くそっ」
そう言って純平も着替えに走り出した。


「純はどう?」
沙希は公に尋ねた。
「凄いよ、何よりもキック力だ。空手部は伊達じゃない。
 足も速いし、フォワードを任せようと思う……」
「え……そ、そうかな……」
「沙希ちゃん嬉しそうだね」
「ん〜なんか純がほめられると嬉しいのよ」
「そうなんだ……」
公は複雑な表情をしていた。

放課後、着替えて練習にやってきた純平をその他の部員達が出迎えた。
「純平、ようこそサッカー部へ」
「なにが『ようこそ』だよ、朝練にも出ないで……」
純平が毒づく。
「朝練は自由参加だからな」
そう言う部員を見回して純平は言った。
「公と……沙希は?」
二人がいない。
「組み合わせ抽選だよ。来週から選手権の予選があるから。
 もうすぐ帰って来るんじゃないかな?」
そう言っているところへ公と沙希が帰ったきた。
「お帰り、どうだった?」
部員の一人が尋ねた。
「1回戦は……」
公が答える。
「栄京学園だ」
栄京と言えばサッカーの名門だ。この地区では南都実業と並んで強豪に数えられている。
予選でもかならずベスト4以上に残っている。
「あぁ〜あ、いきなり栄京かよ……」
「せっかく試合ができると思ったのにな……」
部員達は口々に公のくじ運の悪さを嘆いた。
「それで、今のままじゃ勝負にならないと思うんだ。
 それで、特別の練習メニューを考えたんだ」
そう言って公はノートを開いて全員にみせた。
「これ……マジでやるのか?」
そのノートには殺人的練習メニューが書き込まれていた。
全員しりごみする。
「それに、練習したところで栄京には勝てないって……やるだけ無駄だよ」
部員達はそう言う。
「根性で……」
沙希がそう言おうとしたとき、純平がノートを取り上げた。
「こんだけでいいのか?」
「え?」
純平の言葉に公が逆に聞き返した。
「たったこれだけでいいのか、って言ってるんだよ」
「最低……これだけだ……」
公はそう言った。
「わかった」
そう言うと純平は一人でメニューをこなしだした。
「純平、マジかお前」
部員の一人がそう言う。
「やりもせずに逃げるような奴が部員ってだけでこのサッカー部がどんなもんかわかったよ。
 俺はやると約束したからやる。やりたくない奴は見てればいいだろ」
純平はそう言った。
「純平……」
そう言うと公も練習を始めた。
「そりゃ、公は素質あるし……純平も運動能力あるからこなせるだろうけど……
 俺達にこのメニューは無理だよ」
そう言う部員に沙希が言った。
「私もやる!」
そう言うと沙希も一緒に練習を始めた。
「女の私がやれたら……みんなもできるよ」
そう部員達に微笑んで……沙希は黙々とメニューをこなしていった。
ランニング……ダッシュ……腹筋……腕立て伏せ……ジグザグドリブル……対人パス……
三人は黙々と練習する。
部員達は唖然として三人を見ていた。

「れ、練習終わり……」
公が言った。
「もう…………おしまいか………………たんねぇな…………」
純平が強がったが息が完全に上がってしまっている。
「ほら………できたよ…………
 女の…………………私でも……………できたんだから………みんなも……………」
そう言うと沙希はぶっ倒れた。

次の日の朝、純平は目覚ましの音で目を覚ました。5時30分。
着替えると表に出ようとした。すると……
「お前……なにしてるんだ?」
「お前こそ……」
「いや、マネージャー大丈夫かなと思って」
「おれも……実は……」
部員達が口々に言い合いながら沙希の家の前に集まっている。
そこへ沙希が出てきた。
「みんな……どうしたの?」
「朝練出ようと思って……それにマネージャーが心配だから……大丈夫かなって」
「みんな………………」
沙希がにっこりと笑う。
そこへ純平が現れた。
「純平! みんながきてくれたんだよ!」
「わかってるよ!」
純平はぶっきらぼうに言った。
「さ、行きましょう。朝練よ!」
沙希を先頭に全員が走り出した。
(こいつらが来なければ……俺って格好良かったのに……)
早起きして沙希を迎えに行こうとした純平は憮然としていた。
しかし……
(ま、部員達がやる気にならねえと……沙希もよろこばないからな)
そう思い直すと後を追って走り出した。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトルヒーロー!
サブタイトル第3話
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/ヒーロー, 虹野沙希, 主人公, 神島純平, ほか
感想投稿数22
感想投稿最終日時2019年04月13日 06時01分20秒

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