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第1話 秋晴れのお弁当

「うう・・・は、腹減った・・・・・」

ある秋晴れの昼休み。
机に突っ伏しながら、俺は思わずうなっていた。
・・・間抜けなことに、俺は弁当を忘れてしまったんだ。
昨日遅くまで文化祭で発表する曲を作ってたんだけど・・・かなり遅くまで起きてたもんだから、すっかり寝坊して朝飯も食えない始末。
起こしに来た美樹ちゃんも『もう・・・いつまで寝てるんですか』と呆れはててた。うう・・・

・・・えっと、美樹ちゃんってのは・・・この春、ちょっとした不動産屋の手違いで俺と同居する羽目になった女の子。
同じ丸井高校の一年で、聞けば『学校のマスコット』と言った感じで人気のある娘らしい。
男性が苦手な彼女、最初はちょっとしたことで泣きそうになってたけど・・・最近はようやくこの生活にも慣れて、俺とも家ではちょくちょく話してくれるようになった。

・・・そう。家では。
いくら『不動産屋の手違いで成り行き上』とはいえ、形の上では・・・やっぱ同棲、ってことになるだろう。
学校にバレればよくて停学・・・いや、おそらく二人とも退学・・・かな。
だから俺達は学校では極力『他人のフリ』ってヤツをやることにしていた。
「・・・お〜い・・・」
まあ、ときどき鉢合わせした時なんかは話はしてるんだけど、それでも二人だけの秘密事を抱えてると、特に美樹ちゃんがどうしても人目を気にしちゃって、まともに会話が続くことがない。
・・・最近、どうも美樹ちゃんが気にかかる俺としては、どうにかしたいところだけど・・・
「・・・お〜い・・・」
何せ相手は結構な恥ずかしがり屋。
デートに誘いたくても人目につくところではすぐに逃げちゃうし、家の二人きりの時に改めて、となると、こちらとしてもどうにも恥ずかしい。
なんか良い方法は無いかねぇ・・・

「・・・おいっ!! 龍也!!」
「どわぁっ!!」

いきなり耳元で叫ぶなっ!!・・・ってあれ・・・?

「・・・智香?」
「も〜、なにぼーっとしてるんだよ! ボクがずっと呼んでたのに!!」
「あ、あ、ああ、・・・わりぃ」

さっきから、俺を呼んでいたこの娘は並木智香。一応遠縁の従妹ってヤツになる。
小さい頃は良く一緒に遊んでいたんだけど、中学に入る頃には全然会わなくなって・・・この前の夏の期末試験で補習を受けているのを見かけなければ、多分全然気付かなかったと思う。
・・・美樹ちゃんとの事は、互いの両親にさえ話してないんだから、当然彼女も知らない。バレるわけにはいかない・・・彼女は結構口が軽そうなのだ・・・

「どうしたんだよ。いつもならこの時間は友達とバレーボールでもしてるだろ?」
「ま〜な」

胸を張って答える彼女。わかりやすい性格だ。

「さっきからさ、一年の女の子が龍也のこと呼んでるぜ?」
「えっ!?」
「ふ〜〜ん? お前も隅に置けないねぇ・・・よっ、この色男っ!!」
バシバシッ!

親父くさい台詞を吐いて背中を叩く智香。・・・手加減無しで叩くから、ものすごぉく痛い・・・
って、そんなことより、一体誰が・・・あっ。

「も〜先輩、いつまで待たせるんですか! ちょっと来てください!!」
ガシッ。
「わっ、ちょ、ちょっと待って、林檎ちゃん」
「急いでください! 昼休みが終わっちゃうじゃないですか!!」

怒気混じりの声で俺の腕を掴んで、有無を言わせず運んでいこうとする林檎ちゃん。
彼女は美樹ちゃんの親友で、いつもいっしょにいる娘。
だから、彼女が呼びに来たってことは、美樹ちゃん絡みのことなんだろうけど・・・

「あ、龍也君が女の子といっしょだ・・・」
「いや、これは違うんだよ大森君」
「お〜い、龍也ぁ、仲良くなぁ〜〜」
「だぁかぁら、誤解を招くような発言はやめろ〜」
「いいから先輩、急いでください!!」

クラス中の注目を浴びながら引きずられていく俺。
好奇の視線や智香の冷やかしなんて全然眼中にないんだろう、林檎ちゃんはただただ俺を引っ張っている。
・・・ここで噂になるとまずいんだけど、林檎ちゃんはその辺の事情を知らないから・・・
ほら、大森君なんか、『ひどい・・・親友の僕に秘密を作っていたなんて・・・』って言いたげな表情・・・

「ひどい・・・親友の僕に秘密を作っていたなんて・・・」

あ、本当に言ってた。・・・やばいなぁ・・・
しかし、俺はなにもできずにそのまま林檎ちゃんに引きずられていくのだった・・・

「ほらぁ、先輩はやくはやく!!」
「わかった、わかったから、そんなに急かさないで・・・」

林檎ちゃんが俺を連れていったのは学校の屋上だった。
この学校、昼休みは屋上を解放している。今もいくつかのグループが食事の後のおしゃべりやトスバレーを満喫していた。
そして、そんなグループからちょっと離れたところに・・・美樹ちゃんが待っていた。

「あ・・・」
「美樹、連れてきたよ!」
「う、うん・・・ありがとう林檎ちゃん」
「もう、いいかげんそろそろその恥ずかしがり屋な所直そうよ」
「うん・・・直そうとは思ってるんだけど・・・」
「ああもう! そんなことはどうでもいいから! ほら、話があるんでしょ!?」

そう言って、林檎ちゃんは押し出すようにして美樹ちゃんを俺の目の前に立たせる。

「あ、あの・・・龍也さん・・・その・・・」
「?」

なんだか、今日の美樹ちゃんはどこか落ち着きがない。
最近は学校でもそれなりに普通に話せるようになってきたのに・・・

「あの・・・林檎ちゃん・・・」
「はいはい。結局私がでしゃばるのね」

林檎ちゃんは軽く溜め息をつくと、話を切り出した。

「高瀬先輩、まだ今日はお昼食べてませんよね?」
「は?・・・あ、うん」
「実はですねぇ、今日、お昼休みになっても、美樹、もじもじしてお昼を食べようとしないんですよ」
「?」
「変だなって思って、聞いてみたら・・・美樹ったらお弁当作ってきたんですよ」
「うん」
「良かったですねぇ」
「へ?」
「・・・『へ?』じゃないですよ。うれしくないんですか!?」

なんだか憤慨している林檎ちゃん。・・・いや、いきなりそう言われても、話が見えないんですが・・・

「ですからぁ、美樹、先輩の分のお弁当をもってきてたんですよ」
「へっ!?」
「そのくせ、先輩に切り出せなくて困ってたんで、私が一肌脱いだってわけです」
「あ、ああ、なるほど・・・」

話題の美樹ちゃんは、真っ赤になってうつむいたまま。
・・・そういえば、今まで頼めばお弁当を作ってくれた事はあったけど、美樹ちゃんが自分から、それも学校で一緒に食べようと言ってきたことなんて無い。
まあ、噂にでもなったら困るというのもあったんだけど。
・・・結局今回はしばらく何か言われつづけるだろうな・・・どうしよ。

「で、もちろん断ったりしませんよね?」
「え、あ、うん。・・・今日のお昼、どうしようかって思ってたから」
「じゃ、美樹と一緒にお昼してくれますね?」
「うん。喜んで」

もちろん、断るはずがない。今日は弁当無しだし。
・・・あれ? じゃ、美樹ちゃん・・・

「良かったね! 美樹、先輩一緒に食べてくれるってさ!」

自分事のように喜んでいる林檎ちゃん。

「うん・・・あ、あの、それとね、林檎ちゃん・・・」
「わかってますって。『二人っきりで食べたい』とか言いたいんでしょ?」
「え、あ、あのね・・・」

見る見るうちに真っ赤になっていく美樹ちゃん。

「はいはい。すぐに邪魔者は去るわよ。それじゃ先輩、美樹をよろしくね」
「あ、ああ」
「美樹、今度クレープおごりなさいよ!」

それだけを言い残すと、林檎ちゃんはさっさと校舎の中にもどっていった。
二人残された俺達は、しばらく呆然とその後ろ姿を見送っていた・・・


「あのさ・・・美樹ちゃん?」
「なんですか?」

小声で話す。まわりに聞かれちゃヤバい。

「いや、朝、俺が寝坊したせいであわててたのは認めるけどさ。
お弁当渡すぐらいの時間はあったでしょ?」
「・・・わ、渡そうとは思ったんです。
でも、龍也さん急いでて、人の話をまともに聞いてくれなかったじゃないですか!」

う・・・言われれば。そうだったような気も・・・

「そ、それに・・・たまには、こ、こういうのもいいかな・・・なんて・・・

語尾のほうは小さくなって、うまく聞き取れなかったけど。
言いたかったことはその真っ赤になった表情からわかった気がする。
自分でも顔が真っ赤に火照ってるのがわかる。実にこそばゆい。
でも・・・美樹ちゃんの気持ちが、すごくうれしかった・・・


「あ、あの・・・龍也さん、はやく食べないとお昼休みが終わりますよ・・・」
「ああ・・・うん。じゃ、向こうのベンチで食べようか」
「はいっ!」


こうして俺は、思いがけない昼食を取ることができたのだった。

「へ〜ぇ、あれが龍也のガールフレンドかぁ・・・」

物陰から屋上の二人を除きこむ人影。
その表情はドアの影になってよく見えないが、確かに好奇の色を浮かべていた。

「ボクに黙ってガールフレンドを作ろうなんて、みずくさいなぁ・・・
・・・ボクなら、いくらでも力になってあげるのに・・・」

かすかに笑みを浮かべ、その娘はその場を立ち去っていった・・・

後書き

う〜ん、久しぶりに書いたSSだったんですが、いかがだったでしょうか?

この時点ですでに展開に困っているなんて・・・いつものことだ(笑)
しかも、タイトルはべたべただわ・・・なんだこりゃって感じですね

美樹ちゃんのお夜食イベントいいですね〜。(*^。^*)
これで一気に美樹ちゃんに転んでしまいました(笑)
ここまで行かなくても、学校でもお弁当食べたい・・・そんな思いがこのSSを生みました。
でも、二人の同居が秘密である以上、おいそれと二人きりになれないし。
下手に勘繰られたらおしまいです。
で、どうやってそういったシーンを作ろうかと考えていたら・・・気づけばどたばたラブコメに(笑)

そうそう、謎なのがゲームの海老原のお泊まりイベント。
いくら多少改装したからって、疑ってかかっている人を3日も4日もだませるほどの
偽装が施されてるはずがありません。
じゃあ、いったいどういう内装になってるのか・・・謎です(笑)

ぜひ、誰か僕に主人公宅の間取りを教えてください(.☆)\baki

Writer: K.Ktouth 氏

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