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今は眠るあの頃の気持ち

高校生になっても、何も変わっていない。


流れていく雲。
眩しい日差し。
授業と授業の合間の、短い休み時間のひと時。

いつも通りだ。
変わったのは学校と制服とクラスの顔ぶれだけで、俺自身は何も変わってない。
本当に相変わらずの毎日だ。
何が面白い訳でもなく、かといって何が詰まらないでもなく。
凄くいい事があっても、すごくどうしようもない時があるから、結果的に平均的と言えるだろう。
それは、中学だった頃も同じだったから、何がどう変わったかなんて今更気にもしていないし、もっと高校生になれば何かが劇的に違う物だとばかり思っていたが、なんて事も無い。

ただ、毎日なんてこうして平均的になっていくんだと気づくようになった事は、高校生になったんだなという実感の最たる物だった。


「…くん!」

そう声がしたかと思うと、肩に手が乗る感触。

ん?

振り返った瞬間、俺の頬に何かがめり込んだ。
俺はそのままの格好で、

「‥‥面白い?」
「うん。まあまあかな」

蒼月たかねが、俺の頬に指をめり込ませたまま頷いた。
高校に入ってから、伸ばした髪をポニーテールにして結ったせいか、少しだけ活発に見える。
イメチェンのせいなのか、俺にはたかねが時々、ドキっとするほど大人っぽく見えるような気がしていた。
俺よりいつも一歩前に歩き出しているような気がして、少しだけ不安になっていたのかもしれない。
だから、正直言ってこの悪戯は少しうれしかった。
俺も面白半分でムキになって、そのままの姿勢を貫く事にした。
もっと力をいれてやろうかと思ったが、なんとなく指がポッキリいきそうな気がして、それはやめておいた。

「ふーん、それでなんだ?」
「特に用って訳じゃないけど」

たかねも、指を引かないつもりらしい。

「そうか。
 すると何か。たかねは用も無いのに人の頬に指をめり込ませるのが趣味なのか。
 俺は聞いてないな」
「うーん‥‥違うよぅ」
「まあ、いいけど」

俺がそう言うと、たかねは指をあっさり退けた。

「後姿が妙に重かったから、少し気になっただけ」

そう言って、たかねはほんの少しだけ微笑む。

「そんなに重かったか?」
「え‥‥
 あ‥‥なんとなく、そんな風に見えたかなぁ‥‥って思ったんだけど、そうでもなかったみたい」
「俺はまだ高校生だっての。
 今からそんな枯れてる訳ないだろう」
「そうよね」

たかねの笑顔に、俺もつられて頬が緩む。
こんな瞬間も悪くない。

「なあ‥‥」

俺は、たかねから窓の外へ目を移した。
窓から入ってきた気持ちのいい風に誘われたからだ。

「十五年後も‥‥今日みたいな日だったらいいよな」

何も変わらず。
ただいつもと同じ毎日。
良い事も悪い事も平均になっていく毎日。

でも、日差しがあって空気も穏やかで、傍に‥‥‥

「そうね」

たかねも、空に目を向けているに違いない。そんな風な声だけが聞こえてきた。

Writer: じんざ 氏

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コメント
  • おだやかな感じがええね☆
  • 次も期待してます!
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