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30:私のメモリアル

わたしはそう思ってない。
思ってないと思っていた。


親しい友達。小さい時からの幼なじみ。
気が付けば近くに居る人。

ううん……居てくれた人。
そう思うようになったのは、いつからだったかわからない。
ただ、あの人の笑顔を見るだけで、わたしはすごく幸せになれた。
声を聞くだけで、なぜかドキドキした。

これが……本当の気持ち?

わたしには、まだわからない。
鼓動や気持ちは、もう知っているのに。
わたしには、それを信じていいのかわからない……。

「詩織、一緒に帰ろう」

先に待っていようと思ったわたしに、そう言ってくれた。
あなたは気づいてないのかもしれない。
トクトクとちょっと騒がしくなった心臓の音。

「うん、一緒に帰りましょう」
精一杯の笑顔を作ったつもり。うまく出来ているかな……
ただ顔だけが熱い。

身体の中、心の中では、一生懸命気持ちが叫んでいる。
でも、わたしには聞こえなかった。ううん……わたしが耳を塞いでいるだけ。
もう知ってるのにね。もう自分でも気づいているのにね。

「今日、どこか寄ってから帰らない?」

…が言った。友達を誘うように、明るくニコリと笑いながら。
少し照れくさそうに見えるのは、わたしの気のせい?
「うん、いいわよ」
「じゃ、どこに行く?」
わたしは、少しだけ考えた。秋の高い空が目にはいる。

「きらめき大通りの並木道とか……だめ?」
思いついたのはその場所だった。小学校の頃、一度だけ…と、秋の中通った所。

覚えてる?

そっと心の中だけで聞いてみた。でも、それだけじゃ絶対に答えてはくれない事はよくわかっている。
言わなくちゃ、絶対に伝わらない……って。

どんな事でも。

「いいね。もう秋だからなぁ……たぶんイチョウが綺麗だろうな」
…は高い空を見上げながら言った。
とっても気持ち良さそう。

「ね、ねえ……」
わたしは、思い切って聞いてみた。あの頃の事を。
「あそこの並木道………小学校の頃、お母さんに連れられて一緒に歩いたの覚えてる?」
そう言ったあと、…はほんの少しの間だけ、考えるようにしていた。
やっぱり……覚えてるのはわたしだけなのかな。
わたしにとっては、…と一緒の思い出。とっても大事な………思い出。
だから、忘れない。ずっとずっと。

「そうそう、確か映画見に行くってんで、おばさんに連れてってもらったんだよね」

今度は、わたしが一瞬考えた。

本当に? ちゃんと覚えていてくれたの?
信じられない気持ちで一杯。

「え……」
「なんだっけ、なんかアニメ映画だったよね。なんだったか忘れたけど」
「わたしも……忘れちゃった」

ちゃんとそこまで覚えていてくれた事が嬉しかった。だからそこまで思い出せなくてもいいと思った。
口元が、嬉しくて緩んだような気がする。
苦笑している風に見えてないかな……
その時、不意に吹いた風が、やわらなかな秋の匂いを運んできた。
そういえば……あの時も、こんな匂いのする風が吹いてたっけ……
小さい頃、…と一緒に歩いてる時、すっごく楽しかった事は、今はまだ内緒。


いつか……いつか教えてあげるね。
わたしのメモリアル。

Writer: じんざ 氏

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総合評価 投稿数: 279 pts. / 平均: 4.7(良い方だと思う。)
コメント
  • 詩織一人称ものですね。良い感じですよ〜(^^♪
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